第12号(P.3後半~4)韓国 南北、米朝首脳会談以後―韓国労働運動の現況と課題

城西工団労組委員長 キムヒジョン

 毎日、一触即発の戦争の危機の下で、どのように韓国で生きているのか心配している同志たちが多いはずです。でも韓国の人々は、もう戦争に馴染んでしまったような感じです。

 私が幼かった時、北朝鮮軍が攻め込んでくるといって、家ごとにラーメンをはじめ食べ物を買い占めたことを思い出します。その後にも「平和のダム」を建設するといって、国全体が大騷ぎになった記憶もあります。最近、北朝鮮で核弾頭ミサイルを発射したというニュースまで……。しかし、朝鮮戦争終戦後65年の間、戦争はなく、一言で言うなら、もう韓国の人々は戦争に無感覚な状態です。

 しかし、星州(ソンジュ)・ソソンリに配備されたサードについては、北朝鮮のミサイルを防御でき、朝鮮半島が脅威から守られるとして配備に賛成し、米軍が撤退すればすぐ戦争が起こると言って、「アメリカを通じた戦争抑止力」に寄りかかっているのが現実です。これは「コメディ」のような親米反共思想が根深く打ち込まれたことが原因でしょう。

 イミョンバクとパククネ大統領が、この親米反共主義を利用して戦争の脅迫で労働者民衆を弾圧してきたとすれば、ロウソク以後に誕生したムンジェイン政権はとても洗練された方式でやってきています。

 わずか数年前、パククネが「統一大当たり」(訳注:統一で北朝鮮の安い労働力と韓国の技術力が結合すれば韓民族経済は大発展するという論)を前面に出してきた時、人々はその実現の可能性に多くの疑問符を投げかけました。さほど時がたたないうち開城(ケソン)工業団地は閉鎖されましたし、南北関係は急速に冷却化しました。このパククネの「統一大当たり」論はムンジェイン政府でパッと花を咲かせています。

 全国経済人連合会、大韓商工会議所など資本家団体と各種研究機関は、南北経済協力に対するバラ色の展望を、毎日のようにばらまいていて、鉄道、電力、電機、セメントなどいわゆる南北経済協力の主は、すでに好況を享受しています。朝鮮半島平和の裏面には、韓国資本主義の北朝鮮進出と陸路を通じた中国、シベリアまでねらう資本の利害が代弁されているのです。

 しかし、労働者民衆の生活は決してたやすくはいきません。

 2014年4月16日、304人が、「じっとしていなさい」という国家を信じて待ち、海に沈められました(セウォル号事件)。彼ら・彼女らは、大半が労働者民衆の子どもたちでありましたし、国家は彼ら・彼女らの死を隠すことに汲々としました。

 また、最近明らかになったパククネ政権とヤンスンテ大法院長が共謀した司法壟(ろう)断により、双龍(サンヨン)自動車、KTX非正規職闘争、鉄道ストライキ、全教組非合法化など、数多くの労働者が血の涙を流しました。

 ロウソクで当選したというムンジェイン氏は、大統領当選と同時に非正規職であふれる仁川(インチョン)空港を訪問し、「公共部門100%正規職転換」「最低賃金1万ウォン」を約束しました。 ムンジェインの人気は一時89%を超えたりもしました。それと共に、自分を信じて1年間だけ待ってくれと言いました。引き続き労使政大妥協が必要だとして、「社会的合意主義」を前面に押し出しました。1年の間に、強固な路線の組合は壊し、労使協調的な組合は抱き込んで、労使政大妥協を試みようとしたのです。

 このようなムンジェイン政権に対する不徹底な階級的認識が、ムンジェイン政権と対話をするという候補を民主労総執行部に入れることになりました。

 同志たちがご存じのとおり、ムンジェイン政権は昨年、最低賃金を2けたの率で上げたというのですが、その最低賃金には賞与金と食費・交通費をはじめとする福利厚生費を含ませました。

 世界最高の長時間労働を変えると言って、労働時間短縮を前面に出しましたが、週40時間制でなく週52時間制が法制化されましたし、手当は削減されました。日本も最近「働き方改革」により、月100時間、年間720時間まで超過労働が可能なように許容して、高所得専門職は労働時間規制自体をなくしてしまったという話を聞きました。この法は賃金柔軟化、労働柔軟化の道をより一層拡大すると思います。

 全教組は相変らず法外労組で、双龍(サンヨン)自動車では30番目の犠牲者が出ました。相変らず75メートルの煙突の上にファインテックの労働者が、この蒸し暑さにかかわらず267日目の籠城闘争をしており、ヤンスンテの司法壟断で発生した犠牲者は、相変らず路上に追い出されて闘争しています。

 城西(ソンソ)工業団地には6万人の労働者が仕事をしています。 高齢の労働者、女性労働者、移住労働者が中心になっています。彼ら・彼女らは大半が最低賃金水準の賃金におかれていて、低賃金だからこそ長時間労働をしなければ暮らすことができません。

 ムンジェイン政権が、最近自身の公約である最低賃金1万ウォンに「速度調節」をしなければならないと言っています。南北首脳会談や北・米サミットのニュースも見ることができない状況にある城西工団労働者にとっては、「朝鮮戦争の危険が消えて、南北の平和がくる」という期待どころか、最低賃金の約束も古草履のように捨てるムンジェイン政権に対する期待も見出すことはできないと思います。

 朝鮮半島の平和を話しながら、酷暑の戦場のような死の現場で仕事をする労働者、出入国取り締まり班の係員の踏みにじる暴力の下で苦しむ移住労働者がいて、果たしてムンジェイン政権の平和は誰のための平和でしょうか? 

 同志たち。「平和」といっても、誰かを排除する平和、平和を話しながら一方で死の戦場に追い詰める平和は、私たちは拒否します。

 南北首脳会談以後、イジョンソク前統一部長官は、「労働組合のない韓国の労働者=北朝鮮の労働力」と言いました。そして中小企業中央会をはじめとする資本家階級は、北朝鮮労働力が、最低賃金引き上げと労働時間短縮、少子化傾向によってますます若い労働力が減って人手不足が深刻化する中で、大いに役に立つと主張しています。韓国の資本家はよだれを流すほかないでしょう。事実上、非識字率0%で最高の勤勉性を持っている北朝鮮労働力は、資本家には最高のプレゼントです。

 このような時、労働者階級は揺らぐことなく闘争しなければなりませ

ん。世界的経済危機は労働者階級に闘争を要求しています。

 寒い冬、韓国を明るくしたロウソクのあかりは、資本主義の矛盾を明らかにすることには失敗し、新自由主義政権を誕生させました。労働運動を改良主義化させる社会的合意主義、内容は影も形もない形式だけの民主主義は、結局資本と政権の食欲による結果を表すだけです。

 「労働(運動)のない民主主義」「労働(運動)のない平和」を暴露して、自由主義勢力に反対する先進的な活動家の闘争と連帯、一歩進んで世界的連帯が必要です。

 韓国の闘争歌(「行け!労働解放」)の、「99回敗北してもただ一度の勝利」という歌詞のように、資本主義が平和をもたらすことはできず、労働者の階級的連帯なしで新しい社会は成り立つことができません。したがって99回敗北しても最後のただ一度の最終勝利のため、共に闘っていきましょう。 トゥジェン!

国際連帯共同行動研究所

新たな労働者の「インターナショナル」の建設を目指す研究所です。