第12号(P.2~3前半)韓国 サード阻止闘争の現場から
★ソンジュ住民対策委員会ソソンリ対策本部長 パクチョルジュ
2016年冬から2017年春が来る時まで、「これが国か!」「大韓民国のすべての権力は国民から出てくる!」と叫んだ光化門ロウソク国民によって、不正と腐敗の大統領・パククネが弾劾されましたが、パククネは弾劾の渦中にもサードを配備しました。
表向きのサード配備の名分は、北朝鮮の核とミサイルから韓国と駐韓米軍を守るということでしたが、軍事専門家たちさえも朝鮮半島の地形的特性と、まだ開発中のサード武器の軍事的効用性の非適合性を公に明らかにしました。
これはムンジェイン政府でも同じでした。ムンジェイン政府はサード導入過程の不法を探し出し、一から再検討すると公言しましたが、北朝鮮の6次核ミサイル試験発射直後、サード1基の発射台の「臨時」配備完了を指示しました。
パククネ政府はセウォル号惨事と労働悪法問題など、国内の難しい政治的状況でサードという戦争武器の導入を口実に国民を安保イデオロギーに閉じ込め、危機をまぬがれようとしました。武器導入をめぐる賛成・反対で国民を「愛国者」と「北朝鮮の手先・アカ」に分けて、国内の難しい政治状況を突破しようとする政治的目的を有するものでした。
光化門でロウソクのあかりを共に照らし、「国民が主人となる、正しく平等な国を作る」と公言したムンジェイン政府においてもサードは、進歩勢力だけでなく安保を最優先に掲げる保守的支持勢力をもすべて一つにするための戦略的曖昧性をもった政治的計算の産物でした。
したがって大韓民国においてサードは、その導入と配備決定において、すべて軍事的効用性よりは政治的目的が優先されており、韓米同盟を掲げるアメリカにとっては、軍事的にも経済的にも、そして政治的にも必要な武器としてサードがあります。アメリカが望んで配備することになった武器がサードであり、それは中国を牽制しようとするアメリカの東アジア軍事覇権戦略と、アメリカ本土防衛のための全世界MD(ミサイル防衛)構築の核心を成し遂げる武器体系です。ひたすら、アメリカによるアメリカのためのアメリカの武器が、すなわちサードです。
2016年9月30日、星州ソソンリのロッテゴルフ場がサード配備地域に決定されました。私たちは、サード配備決定には手続き的正当性と合法性がなく、白紙にもどして再検討することを要求し、配備決定に反対しました。また朝鮮半島、すなわち大韓民国のどこにもサードは必要なく、かえって有事の際に朝鮮半島にもう一つの戦争を呼び起こす武器でしかないとして、サードの即刻撤回を要求しました。アメリカのための武器によって、再び朝鮮半島で戦争が起きることになれば、ソンジュ・ソソンリと金泉(キムチョン)が戦争の最初の攻撃対象になるかもしれないという危機感と、絶対的な平和を成し遂げなければならないという差し迫った思いからでした。
今は3か月目のサード基地内部の関連施設のための工事が進行中です。そして村には住民たちの工事阻止闘争を防ぐために警察が常駐しています。毎朝夕にサード基地につながったチンバッ橋(訳者注―ソソンリにある橋)と正門の前で、円仏教の教務たちと住民たち、平和活動家が工事車両と工事作業員の出入りを止めながら、「サード工事中止」と「サードが去れば平和が来る」を叫んでいます。金泉でも幼い子どもから80才を越えたおばあさんまで、毎晩一時間ずつロウソクのあかりを照らして、700日を越えて「サードは去れ、平和よ来い」を叫びました。
2年という時間を闘ってきましたが、初めから今まで手続き的合法性にのっとり白紙にもどし再検討することや、非合法的・暴力的に行われた配備を撤回せよ、との要求はただの一つも受け入れられませんでした。かえって住民と活動家の反対闘争が監視の対象になり、非合法化されて連行され、または裁判を受けたりもしました。
しかし、私たちの闘争は一瞬も止まらなかったので、2017年4月26日に1次配備と2017年9月7日に行われた2次配備以後に、サード運用とサード基地造成工事を止めることができ、さらに韓・米当局が2017年に終わらせようとしていた完全配備と稼働を不可能にさせました。
前のパククネと現在のムンジェイン、二つの政府が「北朝鮮の核の脅威」という偽りの名分を掲げて押しとおしたサード配備によって、主権国民としての権利を無視され、公権力を振り回した日常的な暴力にさらされましたが、私たちは、生活基盤だけでなく、大韓民国さらには東アジアと世界の平和を揺るがすサードというアメリカの戦略武器体系を、無用化させる闘いをやめませんでした。
休みなき闘いで止めたサードが、いよいよ朝鮮半島に吹いた平和の風と出会いました。 この平和の風の出発地は、まさにここ、サード撤回の闘争現場であったことを私たちは誇らしく思っています。
先日、朝鮮半島サード配備の責任者だったハリー・ビンクリー・ハリス新任駐韓アメリカ大使が、「北朝鮮の核の脅威が消えればサードを配備する理由がない」と明らかにしました。私たちはサードが北朝鮮の核とミサイル防御のための武器体系でなく、アメリカのミサイル防御体系構築のための戦略武器であることを主張してきましたが、韓・米当局が掲げた名分のとおり南北平和協定が締結され、北朝鮮の核廃棄が同時に行われ、北朝鮮の核の脅威が消えるならばサード撤回は当然の運びになります。そしてこの事実をサード配備を担当した前任の太平洋司令官が確認したのです。
過去70年、朝鮮半島には北朝鮮の核・ミサイルの脅威と、アメリカが韓国と日本を含めた朝鮮半島周辺国で運営してきた戦略武器の脅威が残ってきました。 脅威は対決を産みましたし、その対決がまた他の戦争を常に準備してきました。 もうその脅威と対決を吸いとっていく平和が用意されています。
しかし揺るがない朝鮮半島の平和が造成されるためには、北朝鮮に対する恒常的な脅威になるアメリカの戦略武器、特にサードを先に撤収させるべきだということが私たちの考えです。
サード導入決定と配備過程で行われた国家の不法と暴力の前に、ただ平和な身一つで闘ってきた私たちの「サードは必ず撤回される」という信念が、まもなく実現されそうです。「いかなる武器でも平和を成し遂げることはできない」という真理にもとづいて闘っているからです。
戦争と核兵器の悲劇を誰よりも痛切に記憶する隣国日本の、平和を愛する多くの方々の応援に感謝を申し上げ、世界の完全な平和のため、その日まで手を握って共に闘っていきましょう。
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