第11号(P.4~5前半)アメリカ 翻訳資料  徴兵にきっぱりと「NO」を

ブログ「シンディー・シーハンのソープボックス」より 2018年5月25日

*〝soapbox〟(石けん箱)


 20世紀初頭、IWW(世界産業労働組合)の結成をかちとる過程で、労働者たちが街頭で演説する際に演台として使ったのが石けん箱でした。1人が拘束されても、すぐに次の1人が再び箱の上に乗って演説する――アメリカの労働者たちは、こうした不屈の闘いで労働組合活動の権利をかちとっていった歴史をもっているのです。シンディー・シーハンさんがこう名づけたブログで発信した文章を抜粋・翻訳して掲載します。(事務局)

 米議会は、同国における徴兵制の未来について研究する11人の超党派部会を設けることを決議しました。

 アメリカにおける強制的な徴兵制は、その始まり(南北戦争)のときから、きわめて不平等で階級的偏りのあるものでした。南北戦争時には、他の人に金を支払い、自分の身代わりとして戦場に行かせることもありました。

 20世紀のすべての戦争において、徴兵回避や抵抗が行われてきました。アメリカがベトナムで行った戦争犯罪では延べ215万人の軍隊が派遣されましたが、その少なくとも4分の3は労働者階級もしくは貧しい家庭の出身でした。しかし、チェイニーやクリントン、トランプやジョージ・W・ブッシュのような好戦的タカ派の連中が当時は殺し合いの場を避け、エリートむけの安全な部隊にいることを許されたことは周知の事実です。エリートの子弟が兵役を逃れれば、常に貧しい子どもたちが身代わりとなるのです。1世紀半以上にわたって、カネと権力をもった連中の子どもたちが利益を手にするとき、そのツケを払うのは貧しい人びとでした。

 そもそも、「公正な」徴兵制などありえません。「女性たちのペンタゴン・マーチ」は、私たちの子どもを虐殺者・殺人者にする道具とされてきた徴兵制に反対します。そして私たちは、「徴兵制は人びとをラディカルにさせ、アメリカ帝国主義反対の立場にさせる」という誤った考えにも反対します。このような考えも理解はできますが、浅薄で刹那的ですし、国際的な連帯ではなく自己の利益を基礎としていると感じます。例えば、ベトナム戦争当時の急進化は短い期間で終わり、あまり成功したとはいえません。アメリカは今、いっそう深い軍産複合体の沼に埋もれています。

 女性たちのペンタゴン・マーチは、男性・女性に対する強制的な徴兵登録(訳注)にも反対します。真の平等とは戦争などの抑圧からの完全な自由であり、利益のために死んだり、自国の軍隊や上官から性的暴行を受けたりする権利ではありません。

 徴兵登録はまた、労働者階級や貧しい人びとへの攻撃でもあります。登録しなければ連邦政府の学生ローンや補助金の申請もできません。また、運転免許証や州が発行する身分証も受け取ることができないのです。

今年の8・5-6ヒロシマ大行動にシンディーさんも参加!

☆訳注 アメリカの徴兵制度

 アメリカにおける徴兵制は、ベトナム反戦運動が激しく闘われる中で1973年に停止され志願兵制となったが、80年のソ連アフガン侵攻を契機に、「国の緊急事態の際に徴兵を行う」ことを目的に「選抜徴兵法」がつくられた。これにより、18~25歳のアメリカ国民と永住外国人の男性に連邦選抜徴兵登録庁への徴兵登録が義務づけられている。

 連邦政府はウェブサイトで「もしあなたが登録を拒否した場合、連邦政府による学生支援や職業訓練、連邦機関での就職の資格を失い、アメリカの市民権も?奪されます。起訴され、罰金や禁固刑を科されることもあります」と脅しつけている。


Cindy Sheehan シンディー・シーハンさん

 2004年に息子のケイシーさんをイラク戦争で失ったことから、政府の戦争責任を追及するとともに、米軍の撤退を求める運動を開始しました。アメリカの反戦運動における象徴的な活動家であり、"Peace Mom" (反戦の母)として知られています。戦争反対の思いを利用する一方で、実は戦争に加担してきた米民主党、そして運動を選挙に流し込もうとする体制内派の腐敗に怒りを燃やし、徹底的に労働者階級の立場から鋭く戦争の本質を暴くアピールを発信し続けています。

 シンディー・シーハンさんは2011年にも来日し、ヒロシマ大行動をともに闘いました。今年の8・5―8・6大行動に参加したのち、横須賀で行われるデモにも合流します。10月21日の国際反戦デーには、「女性たちのペンタゴン・マーチ」を企画しています。

*写真は、上が「シンディー・シーハンさん」、中が「ベトナム戦争に反対して立ち上がったアメリカの青年たち」、下がシンディー・シーハンさんのブログ「ソープボックス」のロゴ