第11号(P.2~3前半)韓国 翻訳資料 労働者にとって本当の平和とは何か

ヤンギュホン(「労働者歴史ハンネ」代表)2018年5月22日


韓国の団体「労働者歴史ハンネ」の代表・ヤンギュホン氏が左派メディア

「チャムセサン」に寄稿した内容を訳して紹介します。(事務局)


 4・27板門店会談(南北首脳会談)以後、朝鮮半島をめぐる激しい外交戦争は息がつまるように進んでいる。朝鮮半島情勢は外交史に例のない状況で、朝中米のヘゲモニー争奪戦につながっている。韓中日の首脳が日本で会い、中朝が中国で会い、北側では米朝が会うという目まぐるしさは歴史的にも例がないだろう。

 周辺国の主導権争いの中でも特に米朝首脳会談を控えて、北と米国の動きは想像を超える。キムジョンウン委員長がわずか40日後で中国の習近平主席と会い、米国のポンペオ長官も40日後に北朝鮮に駆けつけたのを見れば、朝鮮半島をめぐる主導権争奪戦の気流は急速度で流れていることが分かる。

 こうした朝鮮半島情勢の中で、米国はイランとの核協定破棄を宣言して中東とヨーロッパを揺るがし、東北アジアの主導権を握るために暴力を誘発している。これは「声東撃西」戦略(東で声を上げ、西を攻撃するという戦略)だろう。核協定破棄宣言のすぐ翌日、イランとイスラエルは第4次中東戦争以後最大の武力衝突を起こした。帝国主義強国は絶対平和を望まないという事実が立証され、米国は自国の利害のために戦争も辞さないという事実が目撃されたのだ。

 それでも北朝鮮が核を放棄すれば東北アジアが非核化され、全地球上に平和が共存するかのような雰囲気が盛り上がっている。しかしこれは事実ではなく、朝鮮半島の非核化も現在の状況では不可能だ。北朝鮮側が非核化の約束を守ったとしても、最多の核兵器を保有する米国の核兵器と米韓合同軍事演習、東北アジアの安定という名目で朝鮮半島周辺を縦横無尽に動く、米国の原子力空母や航空機に搭載された核はどうするのか。また、ロシアと中国が保有する核はどうするのか。こうした核兵器に対する何の言及もなしに非核化をわめく恥知らずたちの主張は、彼らの貪欲(どんよく)さを露骨に示すものだ。強大国の貪欲が続く限り、本当の平和は遠い。

 歴史的に進められる朝鮮半島と東北アジアの非核化について、ごく少数の勢力を除けば同意しない人はおらず、戦争に賛成する人もおらず、平和を嫌う人はさらにいない。では、われわれにとって平和とは何なのだろうか?

■平和は緊張のない状態だけではなく

 正義が実現されること

 スイスの社会学者ジャン・ジグラーは、「人が人らしく生きる社会が建設された時に平和が実現される」と指摘する。平和とは緊張がない状態のことだけをいうのではなく、正義が実現されることをいうのだ。国際的な平和は国家間の対立・紛争・戦争がない状態を示すが、国家的な平和は労働者・民衆の政治・社会・経済の安寧と安定を試みることだ。

 現在の朝鮮半島状況が国際的にも国家的にも平和に及ぼす影響は大きいというが、労働者・民衆の人生とはまったく違う。もちろん、板門店会談以後の南北間和解の雰囲気は 今後の朝鮮半島の平和と統一戦略としても有効で、非常に望ましいと思われる。

 それにもかかわらず、平和という言葉が胸に迫らない理由は、労働者民衆の境遇が平和からは遠いということだ。平和の反対の概念は戦争や暴力であり、ここには構造的な抑圧も含まれる。さらに、蔓延(まんえん)する排除と差別も平和を害する根源だ。したがって、本当の平和のためには生存の安定が定着し、対立が消滅する条件が用意されなければならない。

 私たちにとっての平和とは、非正常的な雇用形態が正常化し、雇用を奪われた労働者が原職に復帰し、社会的弱者の基本権が保障され、働く自由と失業者の生存も保障される制度的な装置が用意されることだ。

 対立が存在する限り、抵抗と闘いは必然的だ。階級間の対立と制度的装置による暴力は、平和ではなく人生に対する激しい戦争だ。生存が不安定な状態を平和とは言えない。強者たちは平和を望まない。さらに、両者間・階級間の力のバランスがとれる時、帝国主義をはじめとする社会的強者たちは平和を受け入れるふりでもするかもしれない。従って、鋭い階級対立が続く資本主義では、平和は自動的に与えられるものではなく闘いとるものだ。

 だからわれわれは直接政治の場を開き、生存に関する共同の要求を掲げて団結と闘争を強調しよう。労働者民衆の本当の平和のためにだ。

国際連帯共同行動研究所

新たな労働者の「インターナショナル」の建設を目指す研究所です。