第6号(P.7)イギリス 鉄道労働者が年頭からストライキ

イギリス 鉄道労働者が年頭からストライキ

 イギリスで、年頭から鉄道労働者のストライキが爆発している。1月8、10、12日の3日にわたって、RMT(鉄道・海運・運輸労組)が、メイ政権の後押しでかけられている「1人乗務拡大・車掌廃止・人員削減」の攻撃に対して、5鉄道会社の労働者の統一行動としてストライキに突入した。ロンドンをはじめ、リバプール・マンチェスター・ニューキャッスルなど全国主要都市間の交通は遮断された。

 各鉄道会社は、すでに1人乗務に屈服しているASLEF(運輸職員労組)を動員するなどしてスト破りを策動したが、ASLEFの組合員も組合指令を蹴って、各所でRMT組合員のピケットラインを越えて就労することを拒否した。

 主要各都市の駅頭に張られたピケットラインに対して乗客から「がんばれ!」「スト破りに負けるなよ!」という声がかけられ、各所で一人乗務反対についての討論が巻き起こった。世論調査によれば回答者の75%が1人乗務に反対し、ストライキへの支持を表明したという。

 1人乗務導入の攻撃は、1990年代から、民営化されたイギリス鉄道の諸会社の共通の政策として、政府・運輸省の指導の下に強行されてきた。利潤第一・経費削減、人員削減と公共交通の安全破壊が強行されてきたのだ。

 駅の無人化や切符販売などの窓口閉鎖と並ぶ重要な柱が、1人乗務の導入だった。「列車のドアの開閉と列車の駅からの出発の確認を、車掌の業務から運転士の業務に転換し、車掌を解雇する」という転換である。運転士は、1人乗務を受け入れる契約書を書かされ、すさまじい労働強化を強いられる。車掌は「会社が必要性を認めた場合にのみ」、安全確保業務と関係のない「車内点検乗務員」という業務への「降格」(賃下げをともなう)を認める場合にのみ職にとどまることを容認される、これを拒否したときには「希望退職」という形で解雇される。

 RMTはもちろんASLEFもいったんは反対し、ストを構えた闘争を行ってきたが、現在、ロンドン地下鉄をはじめイギリス鉄道のかなりの部分で、1人乗務あるいはそれに近い形の列車運行が支配的になっている。鉄道各社は、1人乗務を想定して製造された列車をボンバルディア社(カナダ)や日立製作所などから購入し、今後も1人乗務を拡大する方針である。

 その結果、この数年で高齢者・障害者、あるいはベビーカーがドアに挟まったまま列車が出発したり、線路に転落したりする事故が多発している。ひとたび事故が起これば乗務員が責任を訴追され、有罪判決を下される。これに対する労働者・乗客の不満と怒りが、いま爆発しているのだ。

 1993年に行われたイギリス国鉄の民営化は、日本のように路線と業務を地域的に分割して民営化する方式ではなく、「上下分離方式」で、①列車の運行業務、②線路などインフラ管理業務を分離し、それぞれ別個の民間会社に委託するという形をとった。その結果、現在、列車の運行を担う会社(②)は全国で25社におよんでいる【そこには外国の鉄道会社も参入し、日本からJR東日本が三井物産とともに、昨年8月、恥知らずにも「品質の高い鉄道運行実現」「輸送安定性の強化」などをかかげ、中部イングランド旅客鉄道会社の運営権を認可されたと発表している】。

 1993年に発足したイギリス鉄道(British Rail)は、分社化・業務の細分化のもとで早速、列車の遅れ、線路の破断、列車の転覆・衝突などの事故を次々に発生させた。業務の外注化・下請け化・分社化によって、保線作業をはじめとする安全対策における責任体制が初めから崩壊していたのだ。当初インフラ業務を担当したレールトラック社は2002年に破産している。