第17号(P.2後半~3) アメリカ ムミア事件/証拠開示と再審開始の扉が開いた アメリカ政治犯解放運動、歴史的勝利へ
無実の政治犯ムミア・アブ=ジャマル氏の解放は、アメリカ階級闘争の最先端だ。1981年12月の逮捕以来、彼はアメリカと世界の情勢を鋭く分析し、労働者階級人民に帝国主義を打倒する闘いを呼びかけ続けている。民主党など既成ブルジョア政党に依存せず労働者階級自身の力で闘おうと。
本号掲載のUTLAストライキの指導者、アーリーン・イノウエさんも語っている。「アメリカの支配者には、米帝支配のために沖縄を軍事基地の島につくりかえた責任があります。星野さんは、国家権力に対する勇気ある反撃の先頭に立ちました。彼もムミア・アブ=ジャマルさんも、支配階級と権力者を心底震え上がらせたのです」(16年6月19日、星野再審全国集会の演壇で)
彼は60年代末、革命的な黒人解放闘争を切り開いたブラックパンサー党の中心的活動家だった。その後もジャーナリストとして活動し続けた。フィラデルフィア市警察が労働者階級と黒人に日常的な暴虐を加えた事実を報じ続け、特にMOVEという黒人運動団体への弾圧・虐殺(警察は1985年にはヘリコプター空爆を行い、MOVEの拠点だけでなく一街区全体を破壊した)と対決した。
それで権力のターゲットにされ、81年12月、「警察官殺害」をでっち上げられ逮捕されたのだ。だから、どんなにムミア裁判のデタラメさが暴かれても、権力は一切再審には応じなかった。だが昨年12月、ついに再審の扉が開かれた。
裁判所、利益相反を認定
昨年12月28日、アメリカの公共放送NPRを始め主要メディアが一斉にムミア事件についての画期的な裁判所決定を報じた。フィラデルフィア地裁の決定文は、一審に検事長として関わったロナルド・スティールが上級審では判事に就任して控訴(上訴)棄却したことは利益相反だと断じた。〈「実際に不公平な訴訟を行ったかどうかが証明されていない」との検察側主張は問題外で、判事が当該裁判の行方に利害関係を持っていること自体が利害相反〉と。また、地域検事局の当時の記録を提出していないことを断罪した。控訴・上訴棄却そのものが崩され、再審の扉がついに開かれたのだ。
この裁判所決定に続いて、地域検事局内からも決定的な事実が明らかになった。これまで「存在しない」「紛失ないし処分した」とされてきたムミア事件関係の書類が、検事局倉庫が6箱分も「発見」された。
労働者の国際的団結の力
ムミア・アブ=ジャマル氏自身が、常に階級的労働運動を支持するアピールを発し続けてきた。この1月だけでも「UTLAストとともに立とう」「政府機関閉鎖と闘う公務員労働者の闘い支持」「フランスの黄色いベスト運動支持」「帝国主義の壁は打破できる」「米帝のベネズエラ・クーデター策動反対」など多数ある。
ILWUローカル10(国際港湾倉庫労組第10支部)は1999年4月、ムミア死刑阻止・解放を要求し、ILWU本部を動かして西海岸29港すべてを止めた。港湾経営者団体は「経営者との交渉事項以外での争議は違法」として権力を引き込んで弾圧しようとしたが、圧倒的なILWU内外の労働者の団結で粉砕した。それ以来、何度もムミア解放のための実力闘争に決起している。AFL―CIOカリフォルニア州連盟、サンフランシスコなど多くの都市の労組評議会(地区労)も呼応した。その後、動労千葉も、南アフリカのNUMSA(南アフリカ金属労組、34万人)、イギリスのUNITE(さまざまな産業の統一労組、120万人)、IDC(国際港湾労働者協議会)など全世界の広範な労働組合とともに連帯行動をしている。
この労働者階級を軸にした運動が、さらに広範な運動もつくりだした。例えば2010年10月2日、EU(欧州連合)諸国を代表する欧州議会が、アメリカの死刑制度を批判する決議を上げた。賛成574、反対25、棄権39でほぼ満場一致だった。この中で「ムミア・アブ=ジャマル」と2度も言及されている。
こうしたムミア解放運動が、「開かずの扉」をこじ開けたのだ。
次は星野さんの扉を開けよう。
(動労千葉国際連帯委員会・瀬戸忠)
写真は
上、星野、ムミア、ハンサンギュンの解放を!(昨年3月25日 東京)
下、星野解放を求めてサンフランシスコでも行動が行われた。左端は昨年8・6ヒロシマ大行動に参加したシャラット・リンさん(昨年10月11日)
0コメント