第16号(P.4~5)アメリカ 中米の難民キャラバン 巨大な団結を組織し、帝国主義打倒へ

トランプ、難民襲撃を扇動

 トランプ政権は2018年の春から、「麻薬ギャングや中東のテロリストが混ざったキャラバンが押し寄せてくる」というデマを宣伝してきた。11月の中間選挙では、排外主義扇動を選挙運動のメインにした「ミニトランプ」が全米各地で立候補し、トランプがその応援演説に駆けつけた。そして、選挙終盤戦では、5千人以上の軍部隊を国境地帯に展開したことを「政権の実績」として押し出した。「キャラバンが投石してきたら軍は銃撃を」と宣伝した。

 確かに、凶暴なアメリカ帝国主義は、国外でも国外でも人民を銃撃し、虐殺してきた。だが、大統領自身が全米・全世界の前で大っぴらに「銃撃」を叫んだことは、かつてない重大なエスカレーションだ。これは、国家権力の暴力装置を発動するだけでなく、全社会的な反動的勢力に大々的に呼びかけ、「襲撃・虐殺をやれ」とけしかけたということだ。

 「ミニットマン」などの右翼民兵組織はこれに呼応して、フェイスブックなどを使って「戦争だ! 国境を直ちに守備せよ!」と扇動し、銃を持ってメキシコとの国境付近に集結した。右翼のロバート・バウアーズは、ペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグで「ユダヤ人は全員死ね」と叫びながら銃撃し、11人を虐殺した。この行動の前に彼は、「アメリカ人を殺そうしている侵略者=難民キャラバンをユダヤ人難民支援団体が支援している」「トランプはソフトすぎる」とSNSに書きこんでいた。

 多くのマスコミは、トランプの移民攻撃を「選挙戦術」だと報じている。だが、トランプが実際にやろうとしていることは、アメリカ社会全体の分断・内戦化だ。

 トランプが大統領として登場した理由は、アメリカ労働者階級の闘いの爆発への恐怖だ。新自由主義40年の労働者攻撃・社会全体の破壊に対する激しい怒りが渦巻き、ついに大爆発の時を迎えている。だから労働者階級人民を分断し団結を破壊するために、暴力的な差別主義・排外主義を毎日毎日あおり続けているのだ。

団結を組織するキャラバン

 だがアメリカ人民は、むしろ団結を強化してこの暴力的な攻撃に立ち向かっている。

 何よりも、中米人民自身が、「キャラバン」を組織したことが巨大な意味を持っている。これは非常に意識的・計画的な組織化闘争だ。

 戦争・クーデター・内戦から、個人や家族単位で逃れるのではなく、数百人から数千人に上る巨大な集団を組織し、その団結力で子どもや病人などを守りつつ長旅の困難を克服する。それは、難民・移民の当事者だけではなく支援者を獲得する闘いでもある。キャラバンの行く手にあらかじめ連絡を取り、その地元の労働組合などの団体に、食料や薬品などの差し入れ物資、あるいは最低限病人などを泊める場所の確保などを準備しておいてもらう。映像やさまざまな資料もネットで発信され、策年の初めころには、全世界の心ある勢力に中米の難民キャラバンの存在が知られるようになっていった。

 キャラバンの主力であるホンジュラスについて見てみよう。

 経済危機の中で労働者の大ストライキや先住民の決起が組織された。大地主・資本家を基盤とし、右派的公約を掲げて06年に大統領に当選したマヌエル・セラヤも、この闘いを恐れ、最低賃金の引き上げ、無償教育・無料給食などを導入していった。これに対して、アメリカ帝国主義に支援された軍部が09年にクーデターを起こした。それ以降、国家権力と右翼・ギャングによる虐殺がまんえんしている。

 だが労働者人民は、クーデター直後の6万人の教員ストライキを始めとして、不屈に組織的な闘いを継続している。ジェノサイド的な殺戮と襲撃の中でも、必死になって組織化し、団結を守り抜いている。だからこそ亡命も、「団結した行動」「組織的な闘い」として行われているのだ。

 当事者が意識的に団結を組織していることが、支援・連帯の団結を強化している。

勢力に中米の難民キャラバンの存在が知られるようになっていった。

 キャラバンの主力であるホンジュラスについて見てみよう。

 経済危機の中で労働者の大ストライキや先住民の決起が組織された。大地主・資本家を基盤とし、右派的公約を掲げて06年に大統領に当選したマヌエル・セラヤも、この闘いを恐れ、最低賃金の引き上げ、無償教育・無料給食などを導入していった。これに対して、アメリカ帝国主義に支援された軍部が09年にクーデターを起こした。それ以降、国家権力と右翼・ギャングによる虐殺がまんえんしている。

 だが労働者人民は、クーデター直後の6万人の教員ストライキを始めとして、不屈に組織的な闘いを継続している。ジェノサイド的な殺戮と襲撃の中でも、必死になって組織化し、団結を守り抜いている。だからこそ亡命も、「団結した行動」「組織的な闘い」として行われているのだ。

 当事者が意識的に団結を組織していることが、支援・連帯の団結を強化している。

「キャラバンと共に立つ」

 アメリカ教育労働者の声明

 ロサンゼルスはカリフォルニア州南部にあり、メキシコ国境も近い。ロサンゼルス統一教組(UTLA)組合員の3分の1、生徒の7割がラティノ(メキシコ・中南米系)で、長年ラティノに対する差別・排外主義と闘ってきた伝統を持っている。今回も、メキシコ国境に組合員がかけつけて連帯行動を行った。

 そして12月5日、UTLA執行部全員や中央委員、そして全米の戦闘的な教組や教組活動家が署名した「教育労働者はキャラバンと共に立つ」という声明が出された。

 「2018年、数十年間で最大の教育労働者の闘いが行われた。ウェストバージニア州……のストライキ、そしてロサンゼルスとオークランドが今、最前線で労働運動をよみがえらせる闘いをしている」

 「社会正義労働運動の教育労働者は、自分の闘いが抑圧・不正義との広範な闘いの一部であることを自覚している」

 「アメリカ帝国主義によって荒廃させられた国の弾圧から逃れて亡命を求めている人々は、敵意に満ちた状況に対して決起したのだ」

 「われわれの教室では、いかなる国境も認めない。いかなる学齢児も教室に入れよ。家族の分離と収容所への収容に反対する」

全米を組織するUTLAスト

 UTLAは12月14日、19年のストライキに向けて大決起集会を開いた。組合員は3万人だが、集会の結集者は、それをはるかに超える5万人だった。UTLAは、他産業の労働組合を始めとして地域社会全体の団結を組織しているのだ。この日はまた、カリフォルニア州だけでなく全米各地でUTLAと連帯する集会が開催された。

 アメリカ帝国主義全体を打ち倒す力を持った団結をいかにして組織するか。そのための意識的な闘いが、ついに巨大な姿を現してきた。

*写真は上から

①キャラバン支援所を設置したメキシコシティーの自治体労働者

②デモ終着点で会場に入りきれない人が近くのビルの階段から参加(12月14日 ロサンゼルス)

③トランプとマスコミの大宣伝に反撃した労働者人民の闘いが世論も動かしている。米国への移民受け入れが経済や文化、雇用や賃金にプラスになると回答した人の割合はこの2年で顕著に増加した。(上の赤線が2016年、下の青線が18年)

国際連帯共同行動研究所

新たな労働者の「インターナショナル」の建設を目指す研究所です。