第13号(P.2~3)UTLAがストライキ投票に圧倒的な勝利

――82%の投票率で98%の賛成票を獲得!――

■ストの準備は1年前から

 ロサンゼルス統一教組(UTLA)は8月末にストライキ投票を実施し、組合員の83%が投票するという驚異的な投票率で、その98%が賛成票を投じた。この輝かしい結果に、委員長アレックス・カプート―パールは、「この圧倒的な数字は私たちの職場にあふれる活力と情熱をそのまま表している」と語った。

 UTLAの労働協約は昨年の6月で期限切れとなり、ロサンゼルス統一学区(LAUSD)との協約交渉は続けられてきたが、当局の回答は組合の要求からはほど遠く、交渉を始めてから17カ月が経過した今年の7月、UTLAの協約交渉チームは「交渉の行き詰まり」を宣言し、ストライキ投票へ向かって組合員のオルグに全力投球してきた。

 カプート―パールは、昨年7月に開かれた会議でストライキの必要性に言及している。「私たちの生徒が日々直面している教育の崩壊という危機的状況を、ロサンゼルスだけではなくカリフォルニア全州のリーダーたちが、自分たちの危機であることを自覚し、それに備える準備を整えておかなければならない。私たちの労働協約はすでに6月に切れ、健康保険の有効期限もこの12月には期限切れを迎える。ドナルド・トランプが大統領である現実、そしてロサンゼルスの教育委員会が億万長者たちに買収されてしまった今、必要ならばストライキを構えられるよう万全の準備が必要だ」

 

■公教育崩壊に徹底対抗

 「カリフォルニアは全米一の豊かな州であり、ロサンゼルスには全国のどの地域よりも多くの億万長者が住んでいる。公立学校に提供する資金は十分にあるのに、億万長者や金持ち企業が公立学校からその金を奪い、それを手助けしているのがカリフォルニアの政治家たちだ」と、カプート―パールは語る。

 アメリカ、中国、日本、ドイツに続いてカリフォルニア州は世界第5位と経済規模でダントツの経済力を誇っているが、一方で1人当たりの生徒に支払われる教育支出は全50州の中で43位であり、1クラスの生徒数では48位と最下位レベルだ。小学校では37人、中学校や高校では40~50人にまで増えている。保健福祉のスタッフは、週に1~2回持ち回りで学校を転々とする。

 またLAUSDは、全国でチャータースクールに通う子供たちが一番多い地域である。279のチャータースクールがあり、学区の生徒の24%が通っている。イーライ・ブロードやウォルマートのウォルトン・ファミリーなどの大富豪たちが、教育の民営化でさらにもうけようと、「ロサンゼルスの50%の公立学校をチャータースクールにする」計画を進めている。

 UTLAが掲げる主な要求は、クラスの人数削減、適正賃金、保健福祉の専門家(カウンセラー・看護士・図書館司書・セラピストなど)の常駐体制、テストを減らし教育の時間を増やす、チャータースクールの規制、しっかりとした学校内の安全サポートなどである。「ロサンゼルスの生徒たちにふさわしい学校づくり」のための細部にわたる要求項目は69ページに及ぶ。

 「私たちがこうあるべきと考える公教育とそれに必要な資金のビジョンに対して、当局が目指しているのは、公立学校への資金を打ち切って公教育を解体し、完全に民営化することです」と、協約交渉チームの代表アーリーン・イノウエは語った。

■スト前の仲裁交渉にも全力

 9月27日に行われた第1回の仲裁交渉では、LAUSDが提示した調停案に対して、「私たちの学校が直面している重大な問題に取り組む姿勢をなんら示さず、まったく不誠実な回答」と退けたが、今後も調停の場に臨むことを明らかにした。次回は10月3日に予定されている。

 この日の仲裁交渉終了後、協約交渉チームは教育長に書簡を送り、「私たちが賃上げのためだけに闘っていると世間に信じ込ませようとしているが、全く真実ではない。私たちの要求にはこの学区を救おうとするビジョンがあり、数カ月に渡り組合員、生徒、保護者やコミュニティーからの意見を総括したものだ」と、公教育を守るためのUTLAのリーダーたちの要求に妥協はない。

■全州ストの大波が西海岸に

 ウェストバージニアの教師たちが解雇の脅しにも屈せず闘った「山猫スト」(違法スト)は、労働者が団結すれば巨大な力を発揮できることを示した。彼らの闘いに感動し後押しされて、ケンタッキー、オクラホマ、コロラド、アリゾナ、そしてノースカロライナにまで拡大していった教員の全州あげてのストライキは、全米に大きな波紋を広げた。

 教師たちは「もう我慢の限界」と、賃上げと労働条件の改善を求めて立ち上がったが、これは同時に教育労働者としての尊厳と子供たちの未来を守るための闘いでもあった。UTLAのリーダーたちは、そんなストライキ闘争をロサンゼルスの地で再現したいと切に願っている。

 アリゾナでは、ストライキ投票を行い、5万7千人の教育労働者の78%が賛成票を投じて、何十万という労働者がデモに参加し、首都フェニックスを埋め尽くした。

 教員ストライキを呼びかけたリーダーたちは、闘いを終えて次のように語っている。「正義のための闘いであれば、そして労働者の組織ができていれば、どの州であろうと、どこの国であろうと、真の改革は成し遂げられる。団結を固め、しっかりとした組織のもとで明確な戦略を立てれば、必ず勝てる。私たちは『もう我慢の限界だ!』と立ち上がった。労働者階級にとって、『もう耐えられない』という瞬間が絶対に訪れる。アリゾナの教育労働者が決起して反撃できたのだから、誰でも同じことができる」

 アメリカ教育労働者の巨大なストライキの波が、太平洋を渡って私たち日本の労働者にも押し寄せる。

 今がその時だ!

写真は上から、

①スト権投票を控えた前日のリーダーたち。中央の男性が委員長のカプート―パール。

②「ロサンゼルスの生徒たちにふさわしい学校づくりのために闘う」と横断幕を掲げて

行われるスト権投票

③「テストを減らせ」「私たちの権利を守ろう」「クラスの人数を減らせ」「教

師の仕事を守ろう」―UTLAホームページでのスト権投票呼びかけ

④5月 24 日、労働協約交渉への当局の不誠実な対応に

抗議してグランドパークで行われた大集会

国際連帯共同行動研究所

新たな労働者の「インターナショナル」の建設を目指す研究所です。