第9号(P.2~3)拡大する教育労働者のストライキ――「普通の労働者が自ら決起した闘いだ!」

草の根運動で燎原の火のごとく広がる労働者の反乱

 ウェストバージニア州で教育労働者が貫徹したストライキは、全米を揺るがす大反響を呼び、ケンタッキー州とオクラホマ州で教育労働者の全州ストに発展した。続いてアリゾナ州でも、大々的なストに突入する準備をしている。

 今回のこれらのストライキが今までと違うのは、労働組合の動員で労働者がストに突入したのではなく、闘うグループを立ち上げた活動家がソーシャルメディアなどで決起を呼びかけ、労働者が自分の意志で立ち上がり、〝公教育を守る〟という共通の目的で強く団結していったことだ。ケンタッキーとオクラホマの教師は、「ウェストバージニアの教育労働者が、組合執行部のスト中止の指令にも従わず違法ストを続けた行動に触発された」と語っている。「このストライキは、ランク&ファイル(現場組合員)が自ら立ち上がった真の草の根運動だ」

ウェストバージニアの闘いが示した労働者階級の巨大な力

 ケンタッキー州の農村地域で社会科を教えるジョンは、公教育がどんどん荒廃していくことに強い怒りを感じていたが、何もできずにいた。だが、「今回初めて僕はその怒りを声に出し、立ち上がって行動に移すことができた。ウェストバージニアの教師が連帯して闘う姿は本当にすばらしく、共通の目的のためにはあれほど多くの人が団結できるってわかったんだ」と語った。

 「こんなことが可能だと、ウェストバージニアが全米のみんなに教えてくれたのよ」と、ルイビルの教師ケルシー・コッツは、自分たち労働者の力に気付かされたことを興奮ぎみに語っている。

 レキシントンで活動する教師ドリュー・ガーバーは、「ウェストバージニアの闘争が、労働者階級にはものすごい力があることを示してくれた。でも、まだ労働者は自分の力を百パーセント把握できていないと思う」と、今後の展開に注目している。

「私は10歳の息子がいる普通のお母さん」

 ネーマ・ブルーアーは、「#KYユナイテッド120ストロング」というフェイスブックのグループを立ち上げて、ケンタッキーの教育労働者ストを全州に呼びかけた。立ち上げからまだひと月にも満たないが、会員は3万2千名にも達している。「私たちの労働組合(KEA=ケンタッキー教育協会)の執行部はあまり戦闘的ではないの。私たちはもっと戦闘的になり、もっと団結を強めなくてはならない。団結を強化しなければこの闘いには勝てないのだから」

 ネーマはごく普通の教師であり母親だ。鉱山労働者だった父親が年金問題で闘っていたので、2年前にその闘いに関わるようになって、州の政治的な問題にも関心を持つようになった。共和党がケンタッキーの州議会を牛耳るようになった2016年以来、働く権利法が採択され、公立学校への資金は激減、教師の給与も下げられた。学校を立て直すには民営化以外にないという論理で、チャータースクールが推進され続けている。そしてまた今回、教師の年金制度を大幅に改悪する法案が提出されたのである。

 「でも、今までこんなふうに関わったことは一度もないの。私は10歳の息子がいるお母さんで、ビールが好きだし煙草も吸う。それに、よくわめき立てたりもする。労働運動のオルガナイザーでもなんでもないわ。ものすごく怒っている母親にすぎないけど、権力を握っている人に踏みつけられっぱなしなのには、本当に我慢の限界に達しているの」

女性のリーダーシップで労働運動が新たな段階に

 アメリカの公立学校の教員は80%が女性だ。女性が組織したストライキが社会に問いかけたのは、単に給与や労働条件の改善のみではなく、社会のあり方そのものだった。二大政党制で動かされる政治に挑み、教育上の闘いを民営化との闘いへと高め、労働者階級の力を新たな段階へと引き上げた。「働く権利法」が施行されている州で、この法律を破ってでもやるべきだということを示した。

 「資本主義は教師を必要とするが、教師は資本主義を必要としない」

──彼女はストライキでこのことを実感した。

(動労千葉国際連帯委員会 小島江里子)


(写真、上から)

▼ケンタッキー州都での抗議行動

▼ケンタッキー州での集会(3月12日)

▼「オクラホマ・ケンタッキーの仲間とともに」――UTLA(ロサンゼルス統一教組)の執行部

国際連帯共同行動研究所

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