第7号(P.7)イギリス「NHSをカットするな!」ロンドンで大デモ
2月3日、イギリス・ロンドンで、「危機にあるNHS、今こそ立て直そう」という呼びかけのもと、約6万人のデモが行われました。
参加者たちは、〝more staff, more beds, more funds(もっとスタッフを、もっとベッドを、もっと資金を)〟〝Saving lives costs money, Saving money costs lives(命を守るには予算が必要、予算削減の代償は命だ)〟などのスローガンを書いたプラカードを掲げてお昼のロンドンをデモ。政府に必要な予算を拠出するよう求めました。
2012年からNHS病院の民間による運営が始まり、そのもとで医療の質は悪化してきました。病院のベッドはこの30年間で半分に減らされ、あふれた患者が廊下に寝かされているほどです。救急車の不足により、病院にたどり着けずに亡くなる人々も多くいます。
○緊縮財政のしわ寄せが医療に
こうした事態の背景にあるのは、世界大恐慌下での緊縮政策です。
この日のデモに参加した反NHSカットの活動家は「緊縮政策のせいで、本来であれば救えたはずの1万2千人の命が奪われた」と指摘しています。そうした命と引き換えに守られる「国家財政」とはいったい何なのでしょうか?
○労働条件守る闘いと一体
こうした現実の中で、医療労働者はとことん誇りを奪われています。デモでは王立看護協会の会長もマイクを握って、現在看護師は4万人も不足している状態であり、「自分が働いてきたこの40年間で最悪の状況」と語りました。
2016年の1~2月には、ジュニアドクターとよばれる卒業後15年以内の勤務医も、この40年間で初めてストを実施しました。診療報酬や勤務体系の改善に関する政府との交渉が決裂したためです。専門医資格をめぐって激しい競争に叩き込まれ、病院を転々としなければならない――こうした不安定な働き方を強いる政府に対する怒りが、ストで爆発したのです。
○NHS(National Health Service、国民保健サービス)とは?
包括的な保健医療を全住民に無料で提供することを目的に、イギリスで1948年から実施されている制度。16歳から年金受給年齢(女性60歳/男性65歳)まで強制加入で、所得に応じて保険料を払うシステム。イギリスには政府が管轄するNHS病院と私立病院の2種類が存在し、NHS病院での患者の料金負担はない。
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