第18号(P.7)ベネズエラ 米帝のクーデター策動許すな

●豊富な天然資源と民営化狙う米帝

 南米ベネズエラで1月23日、フアン・グアイド国会議長がニコラス・マドゥロ大統領に反旗を翻し、「暫定大統領」就任を宣言した。その数分後には米大統領トランプが「グアイド議長をベネズエラの臨時大統領と公式に認める」との声明を発表し、マドゥロを追放すると宣言。英仏独をはじめ50カ国以上の政府もグアイドを暫定大統領として承認し、米政府の呼びかけに応えてグアイド支持を表明するベネズエラ軍の幹部も現れた。

 トランプはその後、1月28日にベネズエラの国営石油企業に対して米国内の資産凍結などの経済制裁を発表し、2月に入って石油企業総裁ら個人も対象に追加した。4月28日以降には原油代金の支払口座をグアイド側に切り替えるとしている。

 米軍による「人道支援物資」の搬入をめぐってコロンビアやブラジルとの国境では衝突が発生し、住民2人が死亡した。グアイドは軍事介入を要請することも示唆している。  アメリカ帝国主義は明らかに、「人道上の危機」を口実とした軍事介入を計画している。その狙いは、サウジアラビアをも上回る世界最多の石油資源をはじめ、金や鉄鉱石などの豊富な天然資源だ。ボルトン安全保障担当補佐官は「ベネズエラの広大な未開発の石油埋蔵量のため、ワシントンはカラカス(ベネズエラの首都)での政治的成果に大きな投資をしている」と言い放ち、石油資源国有化でベネズエラから締め出されてきた米石油メジャーを再上陸させる意図を隠そうともしていない。ボルトンが記者会見の際に持っていたメモに「コロンビアに5千人規模の米軍」と書かれていたことも明らかになっている。

 米帝は19世紀以降、中南米・カリブ海周辺地域を文字通り「裏庭」とし、その資源や権益を独占することで帝国主義としての自己を形成してきた。とりわけチリでは73年にピノチェトを使ってクーデターを行い、チリ社会を「新自由主義の実験場」とした。そしてアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジルにも軍事政権を誕生させた。そして今、米帝と戦後世界体制の危機が極限的に深まる中で、グアイドを通じたクーデターを試みているのだ。

●必要なのは真のプロレタリア革命だ

 米帝はベネズエラ経済を破壊し、人民に苦難を強制することをとおして軍事介入しようとしている。

 ベネズエラでは現在、170万%近いハイパーインフレ、失業率35%、GDP成長率マイナス18%という現実のもと、食料品や医薬品の不足で多くの人々が命を落としている。生きていけずに国外へ脱出した人々は15年以降で人口の1割=約300万人に上り、19年中には500万人を超えると試算されている。

 前大統領ウゴ・チャベスは、帝国主義と一体の独裁体制を打倒して民主化し、労働者人民の自主的な組織化・自治を推進するとともに、貧困との闘いを進めて支配階級を恐怖にたたきこんだ。だが、ランク・アンド・ファイルの労働者と農民による工場や農地の実力接収、生産管理へと踏み込み始めた時、それを押しとどめ、ブルジョアジーの延命を許した。結局、労働者を「上から」救済しようとすることに逆戻りし、貧困の根を絶つことはできなかった。べネズエラの主要な工業、流通を今も握っているブルジョアジーは、マドゥロ体制の転覆を狙った米帝と結託して意図的に物資不足をつくりだしてきた。

 さらに、近年の原油価格の下落は外貨収入の96%を石油に依存する経済構造を直撃している。困窮にたたきこまれた労働者人民からは、「悲劇が日常だ。国を変えなければいけない」という叫びが上がっている。

 しかし、米帝による軍事介入はこうした人々の苦しみを解決するためのものではなく、むしろ真逆だ。ベネズエラをはじめ全世界で、人々が「戦争はたくさんだ」「アメリカはベネズエラから手を引け」と声を上げ、行動に立ち上がっている。

 ベネズエラの労働者人民の解放はマドゥロの政策を支持する先にも、米帝によるクーデターの先にもない。必要なのは、ベネズエラの労働者階級自身による真のプロレタリア革命だ。

(動労千葉国際連帯委員会・内田しをり)


写真は上から

「アメリカ・カナダはベネズエラでのクーデターをやめろ!」――カナダでも行動が行われている

国際連帯共同行動研究所

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