第18号(P.3)ドイツ  「東京2020 ― 放射能オリンピック」

IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部が国際キャンペーン

 医師の立場から核戦争反対を掲げて闘い、この間動労千葉などが交流を続けてきたIPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部が昨年来、2020年東京オリンピックに反対するキャンペーンを行っています。その呼びかけ文を紹介します。

 2020年に日本は、世界中のアスリートに東京オリンピックへの参加を呼びかけている。私たちは、選手たちが偏見なく平和的に競技できることを期待すると同時に、野球とソフトボール競技が、崩壊した福島第一原子力発電所から50㌔メートルの福島市で計画されることに憂慮している。2011年、ここで複数の原子炉がメルトダウンし、放射能が日本列島と太平洋に拡散した。チェルノブイリの核メルトダウンに匹敵する核の大惨事となった。

 この大惨事の環境的・社会的な帰結は、この地のいたるところで確認できる。多くの家族がその先祖伝来の家から引きはがされ、避難区域はさびれ、汚染土が詰められた数十万のバッグ〔フレコンバッグ〕がいたるところに放置され、森林・河川・湖沼は汚染されている。日本は平常状態へいまだ回帰していない。

 原子炉は危険な状態に置かれており、さらなる核惨事がいつでも起こりうる。海洋・大気・土壌への放射能汚染は毎日続いている。膨大な核廃棄物が原発敷地内の野外に保管されている。もしもう一度地震が起これば、これらが住民と環境に重大な危険を引き起こすことになる。核惨事は継続しているのだ。

 私たちは2020年のオリンピックに向けて国際キャンペーンを企画している。私たちの関心事は、オリンピックのアスリートと訪問者が、その地域の放射能汚染により健康上の悪影響を受けるかもしれないということである。放射能の影響を受けやすい子どもや妊婦には、特段の関心を寄せなければならない。

 日本政府の公的な見積もりによっても、オリンピックには120億ユーロもの巨費がかかる。一方で日本政府は、汚染地域に帰還したくないすべての避難者に対して支援打ち切りの脅しをかけている。〔訳者注:この文章が起草された時点から時が経過し、事態は進んでおり、「支援打ち切りの脅し」にとどまらず、すでに支払いを止めつつある。〕

 核事故に起因する追加被曝の、一般人に対する許容限度の国際基準は年間1㍉シーベルトである。避難命令が解除された地域では、帰還する住民は年間20㍉シーベルトもの放射能にさらされる。膨大な除染作業がおこなわれた場所でさえ、山岳や森林地帯が放射性微粒子の継続的な貯蔵庫として働くので、好ましくない気候条件によってはいつでも再汚染されることになる。

 私たちのキャンペーンは、核産業の危険性について広く啓蒙することに照準を合わせる。日本の人々が今日どのような健康障害にさらされ続けているかを明らかにする。通常運転中の原発でさえも、一般の人々に重大な脅威を与えている。特に幼児と胎児にとってはそうだ。

 核産業の有毒な遺産〔廃棄物〕のための安全かつ恒久的な保管場所は、この地球上のどこにも存在しない。これは事実である。

 私たちは、原発の段階的廃止を呼びかける日本の仲間の取り組みを支持し、化石燃料と核燃料から離脱し、再生可能エネルギーに向けた世界的エネルギー革命を促進するため、オリンピックのために創設されるメディアを活用するであろう。

 私たちは、世界中の軍産複合体の政治的代表者に、本件に関与することへの関心を高めていく。

 私たちは、日本の放射能汚染地域がもう安全だと装う日本政府の試みを強く弾劾する。

 私たちは、世界のすべての組織に私たちのネットワークに加わり、このキャンペーンをまとめていく運営グループをともに立ち上げていくことを呼びかける。オリンピックまでにまだ2年あり〔訳者注:キャンペーンは18年春に始められた〕、組織化の時間はまだある。

「核の脅威のない2020年オリンピックを」 キャンペーンに向けて

アネッテ・ベンシュ―リヒタ―ハンゼン/ヨルク・シュミット/ヘンリック・パウリッツ/アレックス・ローゼン

写真は、

ドイツ・ゴアレーベンで福島との連帯を掲げて毎週月曜に行われている反原発行動