第5号(P.6~7)翻訳資料 どんな核攻撃なら適法なのか?
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翻訳資料 どんな核攻撃なら適法なのか?
ジョン・ラフォージュ (2017年12月7日付『カウンターパンチ』)
アメリカ戦略軍の司令官が「違法な核攻撃命令は拒否する」と発言したことを、マスコミは好意的に報道しています。一方で、こうした報道は核攻撃を「普通のこと」にしてしまうものだという批判があります。ここでは、アメリカ・ウィスコンシン州の反戦・反核・反原発団体「ニューク・ウォッチ」の活動家であるジョン・ラフォージュ氏の論説から抜粋して翻訳・掲載します。
米軍大将、核兵器発射の命令が違法なら拒否できると発言(シカゴ・トリビューン、11月18日)
米核司令官、「違法」な命令に躊躇(MSNBC、11月18日)
戦略軍のトップの大将、違法な核発射命令は拒否できると発言
最高幹部の米大将、トランプの違法な核攻撃命令に抵抗しうると発言(インディペンデント、11月18日)
上記の大見出しはすべて、核攻撃は状況によっては適法だという印象を与える。そんなことがありうるのか。大統領の核兵器についての理解は愚かだと国務長官は述べ、2人の大将も、トランプの核攻撃命令が違法なら命令に従わないと宣言した。だが、どんな種類の核攻撃なら適法なのか。
11月18日、戦略軍司令官・空軍大将ジョン・ハイテンは国際安全保障フォーラムで、「もしも命令が違法だと判断されれば大統領の核兵器発射命令を拒否しうる」と発言した。その4日前には、ハイテンの前任者、ロバート・ケーラー退役大将は上院外交委員会で「(核戦争の司令官は)核攻撃をせよという大統領のいかなる違法な命令も無視できる」と証言した。
両大将は公的な場で前例がない発言をし、「軍事的必要性」「選別破壊」「均衡」という法的原則が核攻撃においても適用されると述べた。
だがこれは、あたかも通常の爆弾であるかのように核兵器を語り、それを「通常化」することなのだ。
軍人が違法な命令を拒否「できる」という言い方がおかしい。米軍のマニュアルには「軍要員は違法な命令を拒否せねばならない」と明確に書いてある。入隊者は全員「違法な命令への不服従は義務であり、違法命令への服従は犯罪として軍法会議にかけられる」と教えられる。
○ある種の兵器は、常に違法
さらに重大なことは、核戦争がこのように公然と話されていることだ。驚くべき無知だ。そもそも、あらゆる核兵器使用は無差別攻撃であり、違法に決まっている。核兵器の軍事的効果が悪影響より多く「均衡がとれた」使用が可能だと考えることができる者は、ずぶの素人、または知らんぷりをしている者だけだ。核兵器の影響が制御も制約も計測も不可能な巨大さであることは、無数の教科書や法律誌、政府研究、民間研究の中で確立されてきた事実だ。
核兵器のいかなる使用も違法だ。国際条約も議定書も協定も交戦規則も無差別破壊を禁じている。また軍事目標に対して不均衡な攻撃、「背信的に殺傷する」兵器、または中立国に危害を与えあるいは環境に長期的被害を与える兵器を禁じている。
チャールズ・モクスリーの『核兵器と国際法』は、条約上の義務を列挙した上で次のように述べている。「核兵器が違法であるのは、本書が網羅した戦争諸法規への違反だけではない。核兵器は戦争の目的であるべき『紛争の解決』をもたらさずに広範で無差別な破壊をするから違法なのだ。……核兵器は兵器ではなく、みだりな破壊のためだけの装置でしかない」
○物理的影響――「完全な廃墟」
軍と議会の幹部は通常兵器と核兵器の途方もない相違が分かっていない。数十万の民間人の殺害――戦争犯罪を犯すこと――なしに核兵器は使用できないことが理解できない。というより、国民がそれを見ないように仕向けている。
モクスリーの『核兵器と国際法』は「核爆発で発生する熱は一億度に達するのに対して、ダイナマイトは約300度だ」と指摘している。この想像を絶する熱は、リン・イーデンの2004年の著作『全世界の大火』で「核兵器はどこで爆発しても、巨大な火災とそれによる膨大な被害が発生する。巨大火災による被害は、爆風被害の2倍から5倍になる」と説明されている。
連邦緊急事態管理局が1977年に発行した『核兵器の影響』は事態を軽視させようとしているが、この本でさえ「爆心地近くの建物やトンネル内の人間は、浸入してくる高温のガスや粉塵によって焼かれうる」と述べている。同書の放射線の影響についての論及は、ABCC(原爆傷害調査委員会)からの引用だが、「遺伝的影響の他に白内障・非特異性寿命短縮・白血病や他の悪性疾病・胎内被曝児の発育遅延がある」と述べている。「核実験でも核戦争でも、長い年月がたっても傷害と殺害が続く」のだ。
イーデンが説明しているように、大火災の「火災嵐」は「広大な地域にわたって多数の火災が同時に発生し、膨大な量の空気が熱せられ、上昇し、ハリケーンの速度で周囲の空気を吸いこむ」。「爆発後10分以内に、この莫大な量の空気の上昇が、巨大な規模と速度で大火災を拡大する。1時間もたたずに広大な地域で地上平均温度が水の沸点をはるかに超え、ハリケーン級の風が吹き荒れ、致命的な環境をつくりだす」
「史上最初の大火災は1943年7月27日から28日にかけての夜、連合軍のハンブルク焼夷爆撃で起こされた。20分以内に11・7平方㌔の地域内の3分の2の建物が火事になった。この火事で13平方㌔の地域が完全に焼け落ちた。ハリケーン級の風が吹いたことが証言と記録で明らかになっている。空気の温度は摂氏200~260度と計算されている。この攻撃で10万人が殺された。近代的核兵器による大火災は、はるかに広大な地域を短時間で焼き尽くすだろう」
米軍は単に核攻撃命令に従わないだけでなく、この違法な扇動を拒否せねばならない。
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